“中山英之展 , and then” 「弦と弧」の音楽(2019)for Multirecording Cello 解説

本番情報

はじめに

建築「弦と弧」映像音楽について、簡単に解説。

"中山英之展 , and then" 「弦と弧」の音楽を担当しました。~8月7日
建築家の中山英之さん(東京藝術大学准教授)の展示会「中山英之展 , and then」の映像「弦と弧」に音楽をつけさせていただきます。大変感銘を受けております。チェリストは山響首席奏者に就任されました矢口里菜子さんです。3...

「弦と弧」のコンセプトをお聞きし、模型を拝見しました。そして、著書をいただき、拝読しました。

中山英之さんの著書  「1/1000000000」を読んで

我々でもわかる、当たり前のものが、ほんの一工夫でまったく変質してしまうという感覚。時間、または空間の何かを少し変質させるだけで、考え方を変えるだけで、違う世界があらわれる。そういうアイデアと想像力に満ちた素晴らしい本でした。

もっと専門的ないろいろなことが書かれているかと思ったら全くそういうことではなく、普遍的で知的な美しさ・面白さを秘めていると思いました。

ぜひいろんな人に読んで頂きたいです。

「弦と弧」について思ったこと

そして、「弦と弧」という建築は、より水平な思考によって、生活スタイルの当たり前を取り除こうとしたものなのだと感じました。

具体的に言うと、普段分けられるはずの水場がつながっていたり、床だと思っていたらそのまま机になっていたり。

そしてある意味、部屋として考えると家具の起きにくい、奇抜な形。人間が機能を考えて切り取ったわけではなく、偶然切り取られたかのような場所があったりしました。それを、住む人に委ねていこうという発想。

ただし、私が感じたもっとも肝要なことが、その形をした建築が、当たり前のようにそこにある感じがすることだと思いました。
その家に住む人にとってはその家の形こそが当たり前で、家自体は何も主張していない。主役はその家を使用する人なのだ。自然な表情をして映像に写っていた、と。

この形に落ち着くまでに、どれほどの試行錯誤があったのか。一朝一夕には到底できないことは感じました。

音楽について

そして私はどのようにその魅力をお伝えするお手伝いができるかなと考え、以下のような約束事をして作曲できるのではないかというアイデアが浮かびました。

・人ではない。人工物であり、家はただの物体であり背景。ゆえに主人公とはならない。故に歌っぽくなりたくない。→ミニマル・ミュージックに系統としては分類されるであろう、繰り返し・ただの部品のような音形の羅列。

・ただし人のために作られた空間である。意図せず協和が生み出されることもある→使用音確定。A♭、G、E♭、Cの4音のみを使用する。これらの音は組み合わせ・上下次第によりA♭Mを思わせる長三和音にもなればCmを思わせる短三和音にもなり、偶発的・無意味的に明暗が発生しすぐ消える。使用音程に変化がないと大局的な曲の動性が失われるので建築にも合うかなーなどと思った。

・「弦と弧」というタイトル、形状を鑑みるに、使用楽器はチェロかヴァイオリンが良い。質量感はあるので、チェロに決定。立体なので3声部にしようかなと思ったが、「弦と弧」というタイトルの対となるようなイメージから、3声部よりも2声部のほうがしっくりきたので、2声部にした。

・大きさや質量など1要素を変質させることによる面白さが出てきた著書に影響され(或いは私がもともと好きだったので)モチーフの著しい速度変化・奏法の変質が頻繁に登場。

・あとは諸々のエフェクトを時候やカメラの動きにリンクさせ、カット割に合わせて曲調を変えました。

建築は合理的に作らないと完成しないので、作曲よりもずっと重く大変な仕事だと思います。
私も自然と背筋が伸びるようにこのように映像にがっちりとリンクさせて作りました。チェロ2トラックのみを使用し、歌としてはあまりに未完成な「部品」しか使用していません。そしてそれらが繰り返されるだけの音楽となりました。非常にシンプルであり、堅牢なのに遊び心がある、それでいてアイデアの余地がある、といった音楽を目指して作りました。

まとめ

個人的にはこれほど面白く作らせていただいた映像音楽は初めてでした。中山さんとディスカッションをさせていただきながらでしたが、ほとんど自由に進めさせていただきました。

そして、矢口里菜子さんに本当に助けていただきました。完成の図が見えづらく大変な作業だったと思いますが本当にお世話になりました。

ご覧いただく方にこの「弦と弧」の魅力が伝わりますように、祈っております。

“中山英之展 , and then”

会期:2019年5月23日(木)~8月4日(日)

開館時間:11:00~18:00

休館日:月曜・祝日

入場料:無料

会場:TOTOギャラリー・間
〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分
TEL=03-3402-1010

中山英之展 , and then
中山英之展 , and then(2019年5月23日~8月4日)の展覧会概要です。
予告編 「中山英之展 , and then」

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